【書評】無印良品が、世界でも勝てる理由

本書は無印良品の海外進出について松井忠三氏が2015年に書いた本です。

松井忠三氏は2001年~2008年まで良品計画の社長、さらに2008年~2015年まで会長を努め、特に社長時代には倒産の危機からV字回復を成し遂げました。




  • 海外出店の歴史
  • 海外出店において大切にしていること
  • いかにブランドを浸透させるか

に重点をおいて書かれています。

コロナ禍の今となって思うのは、「アメリカでは負けてしまったよなあ」と思うのですけど、それはさておき内容を紹介してきましょう。

出店ルール

海外出店では苦労することが多かったようです。家賃が高いところに出店してしまったり、テナントとの交渉に難航したり、現地のオペレーションがずさんだったり。これに関しては生々しい話がたくさん書いてあるので面白いです。日本の常識が通用しないところでやっていくのは並大抵のことではありませんね。

そんな経緯を経て、現在は出店する際に守るルールを厳密に定めているそうです。
例えば、

  • 最寄り駅からの距離
  • 乗降客数
  • スーパーマーケットの面積
  • テナント数
  • 有名テナントの有無

こんな感じです。

これによって「出店してはみたけど全然集客できないぞ」ということを防げるわけですね。

国ごとに出店計画を変える

当たり前といえば当たり前ですが、国や地域ごとに出店計画を変えているそうです。

中国は経済的に豊かな層が急速に増えており、出店しても売上が伸びていくことが期待できる。ブランドイメージも日本製で非常に良く思われている。これは文化的に近いこともあるためか受け入れられやすいみたいです。
だからスピード感をもって出店する。

また、まだインドネシアなど発展途上の国も成長中であれば出店してツバをつけておき、経済的に豊かになった段階で勝てるようにしておく。

一方でヨーロッパは保守的で中間層も少なく、なかなか日本のブランドを受け入れてもらうのは難しいそうです。だからゆっくり出店する。
また、感度が高い人がいるか?中間層が多いか?という問題もあるらしく、第一の都市に出店したら成功したけど、第二、第三の都市ではだめだったというような話もあるそうです。

「ブランドコンセプトを浸透させること」が何より難しい

ブランドコンセプトをいかに理解してもらうか、ということはかなり気にされているようです。

特に無印良品は「引き算の美学」、「禅」のようなコンセプトを内包していて、ただの「シンプル」ともまた異なるため、コンセプトを浸透させるのが難しいようです。(特に欧米は)

戦略としては大々的な広告戦略は行わず、店頭のディスプレイなどで伝える努力をしているようです。

2021年になって

コロナの影響もあるが、アメリカの無印良品は経営破綻し、現在残るは10店舗と半減。ヨーロッパ全体もやや減って39店舗です。(2021年8月)
もともと欧米はゆっくり出店していただけあって、そもそも店舗数はそこまで多くはなかったから経営への影響は少なかったものの状況はよろしくありませんね。

一方、中国は絶好調で約300店舗、そこに台湾や韓国を加えた東アジアでは400店舗ほどあり、日本国内の店舗数と大体同じくらいですね。

中期経営計画でも東アジアに注力していくということなので、今後もこの感じは続くと思われます。
(株主としてはチャイナリスクが発動しないことを願うばかりです)

個人的には欧米で大ブレークする無印良品がみたいけど、この調子だと時間かかりそうだなあ。

おわりに

記事で述べたこと以外にもブランド哲学の話や、イギリスのリバティ百貨店へ出店の話など詳しく書いてあるので興味ある方はぜひ読んでみてください。

参考リンク




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